「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」
我に返って謝るルディをお嬢様は嗤いました。
「罰として、このまま目をえぐってやろうか」
「…………」
尖ったかかとが否応なく目に入って、ルディは芯から震えました。お嬢様の言葉が冗談なのか本気なのかルディには分かりません。そして分かっていることはただ一つ、冗談であろうと本気であろうと、使用人の片目をえぐることくらいお嬢様にとっては何の躊躇いも必要ないということでした。
「ん? どうした。どうして欲しいか言ってみろ」
お嬢様が右足でルディの頭を揺らしました。左目を潰され、ぽっかりと空いた穴から涙と血を垂れ流す自分の姿がいやに鮮明に浮かびます。それでも、どうしていいか、なんと言っていいか分からないルディはひたすら、いつもの言葉を繰り返しました。
「……ごめんなさい、もうしません。ごめんなさい、許してください……」
代わり映えのしない様子に興味が失せたようで、お嬢様は笑うのをやめて、無表情にルディを見つめました。そしてルディの頭から足を離し、おもむろに立ち上がりました。
許されたのだと、ルディは顔を俯せて小さく息を吐きました。自然と無事を確かめるように手で顔を覆います。その瞬間、お嬢様の足がルディの腹を蹴り上げました。一瞬身体が浮くほどの、容赦のない力でした。ルディは息を詰まらせながら、身体を曲げます。痛みと嘔吐感に耐えるその中でルディは、お嬢様が哀れな僕に声一つかけることなく立ち去る音を聞きました。