それが矜恃だと教えられた
それを信じた
ならば耐えていましょう
胎を抉る痛みに
白濁する視界に
ならば笑っていましょう
届かぬ思いに
叶えられぬ望みに
この愚かさで私も貴方も死んでしまえばいい
アイメテ・エデルカイト・フォン・ソゾン。
エデルカイト家の娘として、良家の子女として、彼女は相矛盾する価値観の元に育てられる。すなわち、悪徳を謳歌する親族達を横目に、独り無垢であるようにと。その算段者は他ならぬ彼女の母親であった。娘の純血を案じる母は彼女の躯にまじないを施した。原始的で暴力的なそれは強力に、“侵入者”を排除するよう機能したが、同時に内側に向けてもその牙を剥く。月が巡る毎に彼女をさいなむ痛みは度を増し、その間彼女はただ寝台で苦悶する日々を余儀なくされた。
背景:『レース素材集』(井上のきあ)