魔術師ツェッペンシュトルンのお話 II


「なんだ、またアンタか。仕込み中だよ」
「へへっ、イキのいいのが入ってな」
「新鮮な胎児だ」
「決まってるだろ、人間の赤ん坊だよ」
「ちょっと前に女が来た。腹が膨らんでた。子供を堕ろす薬が欲しいとさ。だがやっこさん、持ち金が足りなくてね。負けてやる代わりに堕ろした子供はおれが貰ったんだ」
「ありゃあきっと娼婦だな。だいたいああいう所にゃ、もう大口で薬を卸してあるはずなんだがな。よっぽど誰も知られたくなかったんだろう」
「本当かどうだか分からんが、やっこさんの言うことには、父親ってのがすごいぜ。かの高名な――」
「おっと、これ以上は守秘義務ってやつだな」
「ボスの子種なら、どの雌猫だって喜んで仔猫を産むけどな」
「まあおかげでいい薬が出来そうだ」
「一週間後に仕上がるぜ。予約しとくかい」
「今のアンタには必要なものかもな」