魔術師ツェッペンシュトルンのお話 III
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「なんだ、あんたか」
「こんな夜に奇遇だな。この先には墓場しかないぜ」
「好きな女の墓でも暴きに来たのか? そういえば最近、えらくべっぴんの女優が死んだんだってな」
「詮索はしねえよ。おれも野暮用だ」
「なあ、その眩しいのを下げてくれないか。あんた達と違っておれは夜目が利くんでね」
「今夜は明るいぜ。満月だ。明かりなんて点けずに歩くのが乙ってもんだ」
「素材集めだよ。墓場の土は元々死者の霊気を吸ってる。今日みたいな夜は、そこに満月からエーテルが降り注ぐ。自分の手は汚したくないが、一級の素材を手に入れたいっていう客は多くてね」
「満月のエーテルを閉じ込めたままにしておくのは簡単じゃないが――そこは偉大なる魔術師ツェッペンシュトルンの腕の見せ所さ」
「企業秘密ってやつだよ」
「ん? いいや、おれは犬じゃないんだ。穴を掘るなんてのは専門外だ」
「いるじゃないか」
「あんたの後ろに、デカいのが」
