魔術師ツェッペンシュトルンのお話 IV


「よう」
「あんたとは行く先々で会うな」
「あいにく、今夜は休店だよ。今の俺は魔術師でも、ツェッペンシュトルンでもない、ただの猫だ」
「ふうん。あんたも悩みの多い人生だな。おれにとっちゃいい飯の種だが」
「いいや、今夜こそ野暮用だよ。あんた達には関係ない、猫の世界の話さ」
「集まりがあるんだ。町中の猫がやってくる」
「おい、ついてくるなよ」
「あんたは確かにいいお客さんだが、だからって俺たちはお友達じゃないんだ」
「よ――っと」
「ははは、どうだ。ここまでは来れないだろう」
「あばよ」