魔術師ツェッペンシュトルンのお話 VI






「なんだ」

「あんたか」





「ざまあないな」
「町外れで、男に襲われた。なんとかここまでは来たが、疲れたよ」
「いや、どこのどいつだかは知らない。見たこともないごろつきだ」
「だが、あんたの顔を見て合点がいったよ」
「そうかあんたの差し金か。白い猫を襲えと、金を積んだのかい」
「見れば分かるよ」
「俺が死ぬのが嬉しくて、楽しくて、だが俺が死ぬのが怖くて、どうして良いか分からないって顔だ」
「俺に腹がたったかい」
「俺が妬ましくなったかい」
「俺は、自由で、何でも出来るように見えたかい」
「はは、はは。どうしてあんた達は、猫なんかをうらやましいと思うんだ」
「俺が死んであんたはどうする。気分が清々したか? 魔術師ツェッペンシュトルンがいなくて、あんたは明日からどうする。ほら、なんにも手に入りやしない」
「ははあ、ははあ、ことわざってのは本当だな。あんたにああ言ったばかりに、このざまだ」
「疲れたよ。ずっと歩いてきたんだ」
「だが最後に会えたのが、あんたでよかったよ。見知った相手だ」
「そういうもんだ。独りで死ぬよりずっと良い」
「さあ、もっとよく顔を見せてくれ」




















「ああ、ああ、やきが回ったもんだ」
「気ままな猫暮らしもこれで終わり」
「だけどそう、そんなに悲観したもんじゃないさ」
「なんたって僕は今日から、偉大なる魔術師ツェッペンシュトルンだ」