『フラスコの中の光輝を見つめる魔女』
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描かれているのは、ホーゼンウルズ辺境伯領で城付き魔術技官長を勤めた魔女、ククセル・イーギー=トルメトギトス。
フラスコに向けて掲げた右手には、魔女を表す杖を持っている。彼女の身体の下に描かれた正円もまた典型的な、魔術の実行を意味するものである(この場合は術者を守る防御壁としての役割を担っている)。
脇腹からは異様な腕が伸びて、彼女の膨らんだ腹部をつかんでいる。また彼女の顔の右半分は老人のようにしわがれている。これらは彼女の師である大魔術師トルメトギトスのものであり、老人の手の下、彼女の胎の中には彼らの赤ん坊が宿っている。
秘術により、父・母・子の三属を備える三位一体の魔女となったという、彼女の伝承に基づく描写である。男性原理は人間の身体の右側に宿るという当時の理念通り、変異したのは彼女の右半身であった。右半身の異常と、また妊娠により、彼女は通常の姿勢で眠ることは出来ず、常に左側を下に寝そべっていたという逸話もまたこの絵で表現されている。
彼女の左手の下、手元の羊皮紙には、彼女の花押である三角の印(当然、三位一体を表す)が見てとれる。
足下には毒蛇とヒキガエルが描き加えられている。これらは魔術師達が扱う恐ろしい毒物の象徴である。
背景の壁掛けに描かれた系統樹は、当時の魔術師による世界原理の図解である。