ベルスート城の辺境伯夫人の“別邸”に、色とりどりの小鳥が飼われているのは、囚われの身である彼女の心を慰めるためだけではない。
古くから、そのような小さな生き物が、呪いの力に敏感であると知られていたからだった。
よく訓練された術士のそれと違い、制御されず、日々増減する夫人の“声”を知るために、邸内の至る所に鳥籠が設けられた。
小鳥達の声は警報である。
彼らが激しく羽根を打ち鳴らし、悲鳴をあげるとき
そこには既に“死”が満ち始めている。
エルメイア・エデルカイト・フォン・ホーゼンウルズ
辺境伯オブリードの妻、シェリーの母。出産時に正気を失い、口から出る言葉全てが死の呪いとなったために軟禁されている。致死の呪いは衣服に施された文様により制御されている。