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<登場人物>
ルディ(14):侍女見習い。裕福な商家に生まれたが、私生児であったため、母の死後は祖父母から奴隷のような扱いを受け続けた。


 側によるなと、皆が言いました。汚いから、臭うから、醜いから、目障りだから。
 ルディが汚いのは、皆が足蹴にするからです。きれいな水を使わせてくれないからです。誰も長く伸びた髪を切ってくれないからです。代わりの服の一枚さえ貰えないからです。
 この家で一番偉いおじい様とおばあ様がそうするのだから、誰も彼もが同じようにルディを扱いました。一番下っ端の使用人でさえ、ルディのことを奴隷か家畜のように見ていました。
 だからルディは、いつも独りで言われたとおりの仕事だけをしていました。それは暖炉の灰をかいたり、残飯や汚物を集めたり、床を磨いたりという、誰もやりたがらないことばかりでした。そのせいでルディの身体はますます汚れてしまい、余計な物に触ったり、許されていない部屋に立ち入ったりすると、ひどく怒鳴られるのでした。
 そして言いつけられた仕事が終わってしまえば、後は地下室の角にじっと座って、それが誰かから見とがめられないように、とただ祈っていました。
 誰かがルディの側に来るのは、何かしらルディに酷いことをするときだけです。
 けれどその時でさえ、誰もルディのことを見てはいませんでした。ルディの髪を掴んで、引きずり回して、顔を殴り、細い身体を蹴り上げるときでさえ、目的も理由も別の所にあったのです。例えば、大切にしていた食器を欠いてしまっただとか、出入りの商人の態度が気にくわなかっただとか、使用人頭に怒られただとか、そういうときでした。
 酷いときには気を失うまで殴られましたが、そうでなければ、気が済んだとき、飽きたとき、手や足が疲れたときに許されました。
 遠ざかる踵を床に倒れたまま見送り、誰もいなくなるとルディは少し息を吐き、それから、やがてズキズキと熱を持って痛む傷よりも、昔優しく髪をすいてくれたお母様が今、どこにもいないことを、ただ悲しく思いました。