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「ほら、リボンを結んであげる。
 綺麗なリボンでしょう。あなたによく似合うわ」

「お裁縫はよくするの? えらいわね。
 そうね、私も嫌いじゃないわ」

「きれいな色。ずっととっておきたいくらい。
 でも目玉は柔らかくて、真っ先に溶けてしまうの。
 剥製でも本物なのは毛皮だけで、中身はおが屑だし、目玉はガラス玉なのよ」

「コルセットを着けるのは初めて?
 確かに窮屈だけど、ドレスを美しく見せるためには必要だわ。
 それに、お医者様によると、女の弱い身体や内臓を守るためにも、コルセットは役に立つんですって」

「おば様が言ってらしたわ。腕や足は良くても、お腹をつついては駄目。
 中身はひどく汚くてにおうから。
 でも、腕や足を切られて生きている人の話は聞いたことがあるけれど、胴体を真っ二つにされて生き延びた話は聞いたことがないわ。
 人にとって真に価値があるものは、不快の中にこそ隠されているのかしらね」

「ああ、気の合う相手と二人で、素敵な時間ね。
 騒がしいのは嫌いなの。あなたが余計なおしゃべりをしない子で良かったわ」

短剣も駄目 鞭も駄目 やっとこも駄目
結構よ
淑女には淑女のやり方が あるというのでしょう
針と糸 裁ち鋏に糸切り鋏
あとはリボンをたくさん
それで十分だわ

→原寸

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